「佐渡島の金山」世界文化遺産登録推進事業





東京で「金の道フォーラム」
「世界の宝」の魅力再認識
江戸時代に佐渡から江戸へ金銀を運んだ、かつての街道「御金荷(おかねに)の道(金の道)」の沿線地域による「金の道フォーラム」(新潟県・佐渡市主催)が9月27日、東京都千代田区の有楽町朝 日ホールで開かれた。ことし7月に世界文化遺産に登録された「佐渡島(さど)の金山」の魅力や価値を再認識するとともに、沿線地域の連携を探った。
パネルディスカッション


パネリスト紹介
旧街道歩き
当時体感
「佐渡を世界遺産にする新潟の会」副会長
佐々木 充 氏

歴史や風習の
研究を
NPO法人「海野宿トラスト」理事長
宮下 知茂氏
次世代へ
雁木つなぐ
(一社)「雁木のまち再生」代表理事
関 由有子 氏

「道」の周知が
不可欠
「としま案内人駒込・巣鴨」会員
野萩 勝利 氏
コーディネーター/ 今野 洋史・新潟日報社東京支社次長
今野/「金の道がつなぐ地域間交流」がテーマだ。まず、それぞれの地域や活動について紹介してほしい。
佐々木/民間組織として「佐渡を世界遺産にする会」を設立し、「新潟の会」、「首都圏の会」と順次拡大。世界遺産登録実現のため、3会が一体となって諸活動に取り組んできた。一番熱の入った活動は、街道ウオークだ。佐渡島内では相川から小木まで、金を運んだ街道を当時の装束で歩くウオークイベントを実施している。登録が実現した今年は、今後の活動が課題になっている。保全、活用、継承を3本柱として、取り組んでいく。
関/越後高田の雁木の町から来た。町の魅力は雁木通りで、金の道もここを通る。雁木は、町屋が自分の敷地を奥行き1.8メートルぐらい提供して人が歩けるようにした部分で、大雪の時に役立つ。雁木がないと、道路は屋根の雪下ろしでいっぱいになり家から出られなくなるが、この細い道がつながることで人々は生活できた。雁木も町屋も減ってきたが、次世代につなぐために「雁木のまち再生」は動きだした。雁木通りの空き町家を、住むだけでなく事業に使いたい人に紹介し、リフォームや補強を行って、スタートアップ起業や移転開業につながっている。
宮下/長野県の上田宿と小諸宿の間に田中宿があり、1625年、田中宿の合宿として海野(うんの)宿はできた。宿場の景観を残す海野宿に観光客が来るようになり、住民がその価値に気づき、1987年に「海野宿保存会」ができた。同年4月には重要伝統的建造物群保存地区に選定された。海野宿を県内外に周知するため、毎年11月に「海野宿ふれあい祭り」を行い、江戸時代の街道を行き交う人々の衣装行列をしている。有志で2018年に設立した「海野宿トラスト」は、保存会と委託契約を結び、ともに活動している。環境整備や公共施設の運営について東御市と指定管理契約を結び、保存会だけでは行き届かない活動を補完している。
野萩/豊島区の生涯学習団体、ボランティアガイドのグループで、2013年に発足した。JR山手線の巣鴨地蔵通りやソメイヨシノの発祥の地、駒込を中心に案内しているが、定番コースのうち中山道を歩くコース、日本橋から巣鴨、板橋が金の道の最終コーナーとかぶる。江戸時代の地図と現在も変わっていないのは真性寺で、江戸六地蔵の一つが安置されている。江戸に出入りする街道六つのうち、その一つである中山道の出入り口にあり、人々は旅の安寧を祈り、帰ってきた無事を感謝して参拝した。また、巣鴨庚申塚は中山道の立場(休憩所)で茶店があり、にぎわいを見せていた。
今野/今後の街道の活用と、金の道を核とした連携について聞かせてほしい。
野萩/昨年の「御金荷の道ウォーク」で、当会を案内説明役に指名いただいた。それからの付き合いになるが、2年前まで「御金荷の道(金の道)」を全く知らなかった。広めることが先ではないか。当会は地域内の小学校の先生、学生、国際協力機構(JICA)の研修生など、若い世代と交流する機会が多くある。金の道を成り立ちから含めて案内するのが、これからの使命だ。
宮下/街道での海野宿の位置付けがはっきりすることから、北国街道を冠したイベントを行っている。春はライトアップしたひな飾りを格子戸越しに眺める「北国街道海野宿ひな祭り」、夏は花火を楽しむ「北国街道にぎわい海野宿夏祭り」を通じて、海野宿の活性化を図っている。来年、開宿400年を迎える。かつて領主だった海野氏から現代までの歴史、風習を研究していきたい。
関/雁木を生かしたまちづくりは空き家の再生から始まった。上越市は商家を改修して「町家交流館高田小町」に、元劇場「高田世界館」は市民の力で再生し映画館を続けている。街道を歩いて農山村に娯楽を届けた「高田瞽女(ごぜ)」は、盲目でも自立していた。その生き様を伝えるミュージアムを雁木通りの町屋に開いた。このような活動を続けて全国町並み保存連盟にも参加している。道のようにつながって各地の皆さんと交流していきたい。
佐々木/佐渡は金銀山以外にも、ジオパーク、ジアス(世界重要農業遺産システム)に取り組んでいる。佐渡の恵まれた資産や資源を生かし、各地と結びつき交流し、一層理解を深めて佐渡を元気にしていきたい。加えて、世界の鉱山都市と姉妹都市交流を持つことも考えたい。
今野/金の道があったから生まれた文化がある。世界遺産登録をきっかけに、街道筋が縁を結び直していっていただきたい。
基調講演
